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出会いの春
桜咲く、四月春爛漫。
期待と緊張をないまぜにした新入生たちが、次から次へと校門をくぐって入ってくる。
この日は、朝ヶ丘高校の入学式だった。
「ちょー、おい、誰だ? 橘まで呼んだのはー」
悪友の一人である加藤が、そう言って露骨に嫌そうな顔を橘に向けてきた。
「なんだよ? オレが来ちゃいけないのかよ?」
橘が言い返すと、
「だっておまえがいたら、女の子はみんなおまえの方へ行っちゃうじゃん」
「言えてる、なんてったって、橘優也(ゆうや)さまは超イケメンのモテ男だからなー」
残りの二人の悪友、内川と和田も賛同した。
友人たちの言葉に、橘は軽く肩をすくめる。
「別に今日は声かけるわけでもないんだろ。例の美少女を一足先に見るだけなんだから、オレがいてもいなくても関係ないだろ」
橘、加藤、内川、和田の四人は、この四月から二年生になった。
新学年の始業式は明日で、今日の入学式に顔を出す必要はない。
なのに、校舎の二階の、一番校門が良く見える教室で、四人の男が集まっている理由というのは……。
加藤が今年の我が校の合格発表を面白半分に見に行き、一喜一憂する受験生の中に、ものすごい美少女を見かけたことが発端だった。
白のハーフコートを着たその少女は、まるで雪の妖精のようだったらしい。
うれしそうに口元をほころばせていたことから、雪の妖精は合格したみたいだともいう。
――というわけで、そんなにかわいい子なら一足先に見たいと話がまとまり、今日に至っていた。
……それにしても我ながら暇なことしてるよなー。
橘はぼんやりと、門をくぐってくる新入生たちを見下ろしながら、思っていた。
でも、ま、今日は特に予定もないし、そんなに美少女なら見てみたい気もするし。
つらつらと考えるともなしに考えていると、橘の切れ長の目が、今まさに校門をくぐって入ってくる一人の生徒にくぎ付けになった。
「あ」
思わず声が漏れる。
他の三人も橘の声に、いっせいに校門を見下ろした。
確かにとても綺麗な生徒だった。
その生徒が校内に入ってきた途端、そこだけパァッと明るく輝いたようになったくらいの。
しかし、橘をはじめとする四人の男たちは、顔を強張らせていた。
その綺麗な生徒はブレザーにネクタイ、グレーのズボンという制服姿だったから。
そう、その子は、男子生徒……男の子だった。
「男じゃん」
橘が呟くと、他の三人は一拍の間のあと、
「嘘……」
呆けたように呟き返した。
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