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少女は「いきますよ……」と真剣な表情で言うと、顔を恵美子の手のひらに寄せ、口をぱっくりと開けた。
「うう……おえ……。おええ……」
「え? 何をしているのですか? ま、まさか、私の手に嘔吐するつもりじゃ……」
「おえええぇぇぇーーーっ‼ げろげろげろーーーっ‼」
「ふんぎゃぁぁぁ⁉」
恵美子は白魚のごとき手に嘔吐されちまったと思い、衝撃のあまりひっくり返った。そして、地面の石に頭をぶつけて気絶してしまった。
「どうですか! こんなにも美味しそうでつめた~いアイスクリームを……あれ?」
少女は出す物を出し切ると、スッキリとした表情で勝ち誇ろうとした。しかし、恵美子は完全に意識を失っている。顔や手、胸元、海老茶色の袴はアイスクリームでべとべとだった。
「もぉ~。食べ物を粗末にするなんて、最近の若い人は困ったさんが多いですねぇ……」
少女は腰に手を当てながら、呆れたようにため息をつくのであった。
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