第5話 巡り会いの街

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「ねえ、恵美子ちゃん。まだ若いのに人生を諦めて自殺なんかしたら、せっかくこの世に生まれてきたのにもったいないわよ? そんな後ろ向きの考えは捨てて、ここでしばらく働いてみなさいな。銀座は巡り会いの街――色んな種類の人間と出会うことができる不思議な場所なんだ。星の数ほどの人間模様が見られて、多くの人間の価値観を知ることができる。だから、銀座で働いていたら、恵美子ちゃんが『私はこう生きたい!』と思うような人生観と出会えるかも知れないわよ。……あと、運が良かったら、素敵な殿方ともね」 「素敵な殿方……。でも、恋愛は不良のすることだって女学校の先生が……」 「あはは、ふっるくさいわねぇ。あんたもさっき口ずさんでいたじゃないか、『いのち短し 恋せよ少女(おとめ)』って。男女が出会えば恋に落ちるのが人の道理というものじゃないのさ。そんな旧時代的な教えは無視、無視! 新しい時代の女は恋をしなきゃダメよ? ただでさえ青春は短いんだからさ」 (なるほど。さすがは都会の美女や。考え方がハイカラやわぁ~)  この時代、親同士が決めた結婚がほとんどで、自由恋愛をする若者は不良扱いされていた。そんな考えを古臭いと笑い飛ばせる加奈子という洋装の美女は、近頃よく聞くモダン・ガールなのだろう。  恵美子は、憧れの眼差しで加奈子を見つめるのであった。
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