そのスイッチは…

5/13
前へ
/13ページ
次へ
長々と続いた説教がようやく終わり、傾きつつある陽が照らす通学路を歩くが、その足取りは重い。 当然だろう、また明日もあの担任と教室で顔を合わせなければならない、そう思うだけで憂鬱な気分になるのだから。 あんな特定の生徒だけを贔屓するような人間がなぜ『教師』をしているのだろうか? いっそのこと、居なくなってしまえばいいのに……。 「ふふふっ、随分と面白いことをお考えのようですね」 それは突然のことだった。 先ほどまで自分以外は誰も居なかったはずなのに、確かに自分ではない誰かの声を聴いたのは。 その声につられるようにして振り返れば、そこにいたのはスーツ姿の男がいた。 年齢は大体三十代ほどと思われ、七三分けの髪に、黒縁眼鏡というフィクションで使われていそうな『真面目』な恰好をしたその男は、一体何がおかしいのかクスクスと笑っている。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加