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長々と続いた説教がようやく終わり、傾きつつある陽が照らす通学路を歩くが、その足取りは重い。
当然だろう、また明日もあの担任と教室で顔を合わせなければならない、そう思うだけで憂鬱な気分になるのだから。
あんな特定の生徒だけを贔屓するような人間がなぜ『教師』をしているのだろうか?
いっそのこと、居なくなってしまえばいいのに……。
「ふふふっ、随分と面白いことをお考えのようですね」
それは突然のことだった。
先ほどまで自分以外は誰も居なかったはずなのに、確かに自分ではない誰かの声を聴いたのは。
その声につられるようにして振り返れば、そこにいたのはスーツ姿の男がいた。
年齢は大体三十代ほどと思われ、七三分けの髪に、黒縁眼鏡というフィクションで使われていそうな『真面目』な恰好をしたその男は、一体何がおかしいのかクスクスと笑っている。
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