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プロローグ
暗く重い雲を抱えた空に向けて、堂々たる白い連峰が聳えている。
その天険を背にする石造りの城は今、荘厳な鐘の音で国中を震わせていた。
城内の典礼の広間では第一王子の成人の儀が執り行われている。
それが国民の目に触れることはないが、儀式が終われば城門が開き、開放された庭園に美貌の王子も姿を見せる。
そこには振る舞いの酒や食べ物、余興も用意されているので国民たちは老若男女開門を待っているのだった。
城下通りには商人達が構えた屋台や芸人も出張っているからこの寒空でも既に賑やかなものだ。
子どもたちなどは既に小遣いを使い切りそうになっていて、あちらこちらで叱り飛ばす親の声も爆ぜるーーその頃。
一際大きく鐘が鳴り響き、誰もが城門を振り仰ぐとそこが輝いた。
おどろおどろしかった雲がゆっくりと割れ、光が溢れ出している。
見る見る広がる雲間から注ぐ陽光が、呆然とした国民たちも暖かく包み出し、その視線の集まる先で城門がぎしりと重たい呻きを上げるとーー割れんばかりの歓声が、鐘の音の残響を掻き消して轟いた。
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