転生白雪姫

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 女王は元々奴隷の娘。あまりの可愛さに貴族の養子に迎えにられ、成長した姿のあまりの美しさに王に見初められ、王が亡くなった今、女王の地位にあるのも衰えを知らない美しさにあった。  女王にとって美しさは力。世界一でなくてはならないのだ。白雪姫が気になるが、染吉を信じるのなら、優先順位はキャサリンにある。  すぐさま女王は兵士を自室に呼び込み、キャサリン暗殺命令を下した。女王にとってこれは大きな賭け。なぜなら、この兵士を選んだ理由がある。兵士による暗殺の成否が美意識のズレの証明にもつながるのだ。  かつて女王が女王に就任した直後。暗殺者として送り込まれたのがこの兵士だった。夜な夜な女王の寝室に潜り込み、女王の寝首を掻くつもりで枕元に立った。その夜はまばらな雲が夜空を漂っていた。ちょうど月が雲に重なる暗闇に合わせて、ここまで侵入しきた。  枕元に立ったその時が雲が切れる瞬間だった。兵士は屈んで身を隠すつもりでいたのに、本能がそれを許さなかった。女王の美しい寝顔に見とれてしまったのだ。  女王が目覚めたのはいつも通りの朝日が昇る時刻。兵士はそれまで枕元に立ち続けて寝顔に見とれていた。女王が問いかける前に、自分が暗殺者で誰の命令なのかを打ち明けて、愛の告白を女王にした。一生を捧げるとも言った。そう、この兵士は美人にめっぽう弱いのだ。  ヤバい奴だと認識した女王は、とにかくこの兵士に部屋から出てもらうため、暗殺者なんて信じていなかったけれど、依頼主を逆に暗殺してこいと命令を下した。  なんと兵士は本当に依頼主を暗殺して帰ってきた。自分は無傷で、女王にも疑いをもたらすようなヘマもなかった。変態ではあるが、有能でもあった。  以来、女王の裏指令において最も功績を上げてきた忠臣。しかし、それは女王が世界一美しいことが条件。染吉の言う通りキャサリンが世界一美しいのであるならば、この兵士が刃を立てる相手は己に向かう。女王の命がけの賭けであった。  いくら魔法の鏡、もとい染吉が言うことだとしても、とてもキャサリンが美しいとは受け入れられないのだ。プライドが危ない橋を渡らせた。
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