だから嫌い

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なんで、あんなこと言ってしまったのか。 数ヶ月前から付き合っていた僕の彼女は、絶対に好きと言わなかった。 俺が告白したときも、 「いいよ。付き合おう。」 ねえ、好き?と聞いたら、 「うん」 俺のことどう思ってる?と聞いたら、 「嫌いにならないから大丈夫だよ」 なんっなんだよほんとっ!! だから、今日こそは言ってもらう。 「ねえ、好き?」 「だから、そうじゃなきゃ付き合ってないよ。」 「好きなら好きって言ってよ。」 そういった瞬間、彼女の表情が固まった。 どうにもこうにも悲しくなった俺は、 「好きじゃないんだろ?無理やり付き合ってくれてたんだろ?もう無理しなくていいよ。別れるか?」 一気にまくし立てて、気づいた。 しまった 俺は 何を言った? 「…ごめん、忘れて。」 最悪だ。 ガキみたいなこと言って。 あんなこと、言ったら ほんとに別れてしまうかもしれない。 自己嫌悪にひたすら浸っていたら、電話がかかってきた。 彼女だった。 「…なに?」 「ばーかっ!」 「は?」 大きな声と、予想だにしない言葉にびっくりして、間抜けな声を出した。 「なんでそんなにバカなの!?私が好きって言わないから??私は、あんたのこと、あんたが好きって言ったずっとずっと前から好きだったんだからっ!!」 涙声で、早口で、聞き取りにくかった。だけど、 「好きって言えばいいんでしょ!!ほんとはずっと前から言いたかったけど、嫌われたくなくって、付き合ってからも夢かもしれないなんて思ってたからずっとずっと言わなかったの!!あんたの何倍も、私の方が大好きなんだからっ!!ずっとずっと好きだったんだから!!」 彼女の、「好き」にはこんなにも俺を赤面させるのか。 電話越しなのがもどかしくなって、俺は思わず走り出した。 彼女の名前を呼んだ。 俺に気づいた彼女が精一杯の声で 「好きだよーっ!!!!!」 と叫んだ。 もうそれで十分。 「俺は、嫌いかもしれない。」 今までの仕返しとして、いたずらをしてやろうと思った。 「私に好きって言わせといて、なにそれっ!!何回でも言うからね、好き。好き。大好きっ!!」 顔が、赤くなっていくのがわかる。 これは、走ったせいだと自分に言い聞かせ彼女の言葉を聞いていた。 「あんたが嫌いって言っても、私は、大好きだし、なんなら大好きなんてありきたりな言葉で表すほどじゃないしほんと、勘違いも甚だしいのよっ!バカっ!!好きだよっ!」 もうこれ以上は、耐えられなかった。 「俺は、お前の好きに弱すぎるってわかったから、嫌い。」 意味が分からない、と言った風に顔をあげた彼女と目が合った。俺は、今ゆでダコのように真っ赤になっているだろう。それでもいい、俺が伝えたいのはただひとつ。 「嫌いなんて、絶対ならない。大好きだよ。」
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