フリップゲーム

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フリップゲーム

「飲んで帰ってくるときに、ご飯いらないって連絡してくれないところ!」  それは突如としてはじまった。まるで玉入れの結果発表のように、お互いの嫌いな理由を放り投げていくゲーム。  離婚の意思も固まった。だから最後はスッキリして終わろう。どちらからともなく出されたアイデアだった。  フリップに嫌いな理由を書いて発表する。なんとその数、108個。煩悩の数だけ出しちゃおうという企画。友達のような夫婦関係だった自分たちらしく、思いつきのアイデアに少しワクワクした。 「だからさぁ。得意先の人と飲んでる最中に連絡なんか──」 「もういい。言い訳は聞き飽きた。今日はそんな感じじゃないんでしょ。嫌いなところをブチまけるイベントでしょ?」  夫は──確かに──と、頷いた。 「じゃあ、次は俺だな。料理が下手なところ」 「ちょっと! 美味しいって言って食べてくれてたとき、あったじゃない!?」 「演技に決まってるだろ」 「ヒドい! 最低……」 「まぁいいじゃないか。お互い、そういった細かいことが積み重なった結果、こうやって離婚を決意するに至ったんだから」  そうね、と呟き、次のフリップを出す。 「疲れてるからって、話相手にすらなってくれないところ」 「だからぁ──じゃあ一日でもいいから俺の仕事を──」 「言い訳する日じゃない!」 「だな」  夫は次のフリップをめくった。
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