お侍さん

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 言って、烏は”お侍さん”を指さす。 「余裕がある。堂々としている。どんな奴が相手でも決して負けないと、そんな自負に満ち溢れている感じがしないか? こいつは、あんたが憧れている男はきっと立派な男だ。強い奴だ。俺みたいな塵屑と同一人物であるはずがない」 「そんなこと……」 「あるのさ。俺にはわかる。眩しいんだよ、この絵を見ていると。自分に無いものをまざまざと見せつけられているようで――――少し、妬けてくる」  苦笑いを浮かべながら、烏は言った。  その表情はどこか苦痛に歪められているような感じがして、彼が心の底から真実を語っているのが良く分かった。 「……だから、俺はこいつとは違う。同じであって良い筈がないんだ」  烏の語る言葉からは、何か思わせぶりな響きを感じたが――――やはり追求すべきではないだろう。人間、誰しも触れられたくないことの一つや二つあるものだ。それはきっと、超人的な力を持つこの男であっても同じことなのだろう。
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