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「嫌ああああああああああっ!!」
絶叫。
その刹那、『私』は『私』と一つになった。
反転する。混乱は殺意に、恐怖は憎悪に、絶望は怨念に。
生まれ変わる、作り変えられていく。
私は目に映るもの全て。
何もかもに激怒していた。
「お前たちのせいだ……」
その声は、確かに私の口から発せられたものだった。気づけば、いつの間にか――――私の腕の中には血塗れのお侍さんの姿があった。
そう、既に私は女を俯瞰する立場にない。
私こそがあの女であり、そして狂おしいほどの怨念の権化だった。
それを自覚して、私の中で何か決定的なものが壊れた。
「は、はは」
声が漏れる。それは笑いだ。
今この場に、これほど相応しくないほどの愉悦の情。
私は、この現状に最上の歓喜を抱いていた。
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