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「雲一つ見えぬ、満天の星空。ただ眺めているだけで気分が晴れやかになってくる。こんな日にゃ、綺麗なお月さん見上げながらゆったりと酒を楽しみたいものだが」
男は立ち止まり、夜空を眺める。
「ついでに可愛らしい姐ちゃんが酒に付き合ってくれるなら、この上なく素晴らしい夜になることだろう。そうは思わねぇか?」
誰に問うわけでもなく、男はそう呟いた。
今夜この場に、男以外の人影はない。ゆえにこれは独り言。酔いどれの戯言以外の何物でもない。
空を見上げたまま、ゆっくりと――――男は腰の刀に手をかける。
「……何もわざわざこんな夜に、刀下げて出歩くこともないよなぁ」
ならば、何を求めて彷徨うのか。
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