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三方から包囲した上での同時攻撃。満足に動き回ることができぬこの場所では、避けられる道理などあるはずもない。よって、その後の結末は決まり切っている。男は影に捕らえられ、無様な死を晒す他ない。
――――筈だった。
「……!?」
「どうした。何をそんなに驚いている」
男は生きている。
その体には傷一つなく、変わらず飄々とした笑みを浮かべている。変化したことと言えば、白く煌めいていた刃が鈍くどす黒い赤に染まっていることだけ。
対して――――……。
「……ああ、何だ。飼い主と違って、こりゃあとんだ醜女じゃねぇか」
そう言い放つ男の足元には、無残に切り刻まれた巨大な蜘蛛の死骸があった。
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