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影どもに動揺が走る。何が起こった。あの一瞬、襲い掛かったのは自分たちの方で、男に反撃の手立てなどなかったはず。なのにどうして――――自分たちの仲間がそこに転がっているのだ。
それを見て、男はより笑みを濃くして一歩踏み出す。
蜘蛛たちは混乱している。目の前で男が起こした光景が信じられず、身動きがとれない。
自分たちの飼い主は、こんな人間がいるなどとは言っていなかった。ただ夜の街であれば、安全にエサを捕らえることができると、そう聞かされていただけだった。だというのに、これはいったいどういうことだ――――……。
やがて蜘蛛のうちの一体が、怯えたように体をわななかせ……男に飛び掛かった。それは、男との力の差を明確に悟ったが故の行動だった。殺される前に、殺してしまえ。
――――だがその決死の突貫も、男の振るう刀の前に無残に散った。
残った最後の蜘蛛は、男から距離を離すべく徐々に後ずさる。
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