お侍さん

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   どうにかして烏を励ましたいと思ったが、口を開こうにも言葉が出てこない。 それもその筈、これほど悲壮感溢れた表情を見せる男に、私のような半端者がどんな言葉を掛けられると言うのか。どれだけ言葉を選ぼうと、どれだけ相手をわかった気になったとしても、真実その苦しみを理解することなどできはしない。上辺だけの同情になど何の意味もないことを――――私は良く知っている。  結果、この場に微妙な沈黙が落ちる。自分の部屋だというのに、どうにも居たたまれない。  どうにかして話題を変えなければ――――そんなことも考えていたのだが、しかし。 「そういやァ、この掛け軸……題はうらみづき、と言うんだっけ?」  沈んだ表情を見せていた烏が、突然調子を変えてにこやかにそう言うものだから、私は面食らってしまう。  それは明らかに不自然な流れで、おそらく彼は私に気を使ってくれたのだろう。自分の問いで恩人にあんな表情をさせておいて、これでは何とも情けない。だがこの沈黙から逃れるためには、烏の問いに答えるのが一番の選択肢だった。
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