お侍さん

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「ええ……祖母がそう言っていました。どういう意味なのかは、良く知らないけれど……あの怪物と同じ名前」 「ああ。奇妙な話だろう、俺に似た男が描かれていて、怪物の名が与えられ、この絵の持ち主であるあんたは実際に怨憑きに関わっちまった。名ってのは意味なくつけられるもんじゃあない。人だろうが動物だろうが、物だろうが……それ相応の由来を込められて付けられるもんだ。だからこそ、この”うらみづき”という絵は――――やはり危険なものなのだろうな」  危険なもの――――。  そう言われて、腹が立たないと言えば嘘になる。  これは祖母から贈られた大切なもので、決して他人に貶されて許せるものではない。  けれど、今はそれ以上に烏の話に納得がいってしまったのだ。 「これを持っていたから……私はあなたたちと関わることになったと?」 「どうかな。正確なことはわからんが――――可能性がないとは言い切れんだろう?」  確かに、どうにも出来すぎている感はあるのだ。  この掛け軸に関係することが、現実に起きている。  まるで夢、幻。私のような子供が、現実に嫌気がさして逃避に走る妄想。
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