お侍さん

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 一夜の夢物語が、突如として現実になってしまったかのよう――――。  考え込む私をちらりと横目で見て、烏の表情が変わった。 それまでの軽薄な態度は鳴りを潜め、真剣な声色で私に問いかける。 「あんた、この掛け軸以外に……怨憑きについて何か心当たりはないのかい?」 「え……」  そんなことを急に言われても、何のことかさっぱりわからない。  困惑した私の顔を見て、烏は難しい表情を浮かべ頭を掻いた。 「――――普通、あんな化け物を前にしたら腰を抜かして動けなくなるか、発狂しておかしくなっちまうか、はたまた恐怖で泣き叫ぶか……まあ思いつくのはそんなところだろう。  けどあんたは」  そう言って、烏は私を指さす。 「向かっていった。あの異形の化け物を前に、臆せず――――いや、怒りに任せて立ち向かった。そんなことが普通あり得るか? 俺があんたに『関わるな』と言ったのは、ただ危険だからというわけではない」 「それは、どういう……」 「あんた、素質があるかもしれんのだよ。怨憑きの……な」
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