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蠢く蜘蛛
薄暗い黄昏時の街並みを眺めながら、私はゆっくりと歩を進める。すでに日は落ち、夕焼けの名残が夜空に微かな赤色を差しこんでいる。星明りに照らされているのか。はたまた日の光の残照なのか。どちらでも構わないが、普段なら殺風景で面白味などないように感じられる街並が、少しだけ幻想的に彩られるこの時間が好きだった。
まるで現実とは異なる、まったく別の世界にやってきたような錯覚を覚える。いや、その世界の方が私の知る現実に入り込み始める――――とでも言えばいいのか。それは昼間私たちが過ごしている日常が、あまりにも殺風景で機械的なつまらないものだから、尚更そう感じるのかもしれない。
その点、夜は良い。
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