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パンケーキの店を出て、友人と別れ、彼に連絡をした。
私から誘うのはたぶんこれが初めてで、そして最後だ。
彼は駅まで迎えに来てくれた。家に向かおうとした彼を止めて近くの喫茶店に入った。
アイスコーヒーで、からからに渇いた喉を潤す。
思い出を語る私を、彼は出会った瞬間に見せたあの時と同じような不思議そうな顔で聞いていた。
この人のことを嫌いになったわけじゃない。でも、私にとっては目の前の彼よりも大事な人が他に居るというだけのこと。
「いままで本当に楽しかった。もうあなたとは会わない。別れよう」
彼は意味がわからないといった様子で、問い詰める。
「どうして? 俺のこと嫌いになったの?」
「そう。あなたのこと好きじゃなくなったの」
理由は言えない。
いまさら夫のことを挙げるのは卑怯だし、それ以上に子供を理由になんてことはしたくなかった。
「わかった……。じゃあ最後に理由だけ教えてほしい」
何も言わずに去ることもできただろう。
ただそれではあまりにも彼に申し訳なかった。
私は決心を固めて口を開いた。
理由を聞いた彼は、笑ったのか、怒ったのか微妙な表情を最後に残し、出て行った。
「あなたとは枕の高さが合わないの」
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