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おれの目の前にいる西森夏菜は見た目は、
どこにでもいるような普通の女子高校生だ。
ただ、今時のおしゃれ女子みたいに化粧をしたり、
かわいい髪型に挑戦したり等の飾り気は全くない。
制服も着崩すことなく、
校則をきちんと守った清楚な制服姿が西森のスタイルだ。
キリッとした表情が真面目さと知的さを物語っていて、
男側からすると、隙がなくて近寄りがたい女子の部類に入る。
さらに、いつも無表情か怒った顔しか見せてないので、
気軽に声さえかけられない。
でも・・・
西森もニコッと笑えば、
年相応のかわいい女の子になると思うのだが・・・。
いやいや、今はそんなことを考えている場合ではなく、
お説教タイムである。
「ええと・・・、
西森、 長くなる話なら職員室で聞くけど・・・」
「いえ、 そんなにお時間は取らせませんから 」
「は・・・はい・・・」
女子高生に威圧されるおれ。
西森はおれをにらみながら話し始めた。
「授業のことなんですけど、
生徒達から邪魔されても スムーズに進めてくれませんか?
いちいち中断していたら、
どんどん遅れが生じてきて こっちに迷惑がかかっているんです。」
はい、おっしゃる通りです・・・。
「文系だからって、 甘く見ないでくださいよ。
大学受験には必要な教科なんですから」
西森にズバズバと 自分の「悪い点」を指摘され、
心がズキズキ痛む。
そして、ただただ謝るしかなかった。
「ご・・・ごめん・・・ 」
西森はもう一度キッとおれをにらみつけて、
「以後、気をつけてくださいね!」
と強い口調で言うと、
ツカツカと歩いて教室に戻っていった。
こ・・・怖かった・・・。
先生なのに、
生徒にこてんぱんに叩き潰されるとは ほんと情けない。
でも、西森の言う通り 授業も少し遅れているし、
生徒達に迷惑をかけていることも確かだ。
がっくりと肩を落としていると、
「あ、高山ちゃん! 夏菜にお説教されていたの?」
と、クラスの女子たちが
わらわらとおれの周りに集まりだした。
「別に説教されていたわけじゃねーよ」
「じゃあ何を話していたの?」
「授業をスムーズにやってくれないか、 っていうお願いだ」
「それ、説教じゃん」
ま、確かに説教だったが・・・。
「でも、ま、 夏菜は勉強に必死だからね、 私達と違って。」
一人の女子が何気につぶやいた。
確かに、西森の勉強にかける熱意は
他の生徒以上のものがあることには気づいていたが、
どういう背景が隠されているかまでは おれは知らなかった。
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