第1話:苦手な優等生

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おれの目の前にいる西森夏菜は見た目は、 どこにでもいるような普通の女子高校生だ。 ただ、今時のおしゃれ女子みたいに化粧をしたり、 かわいい髪型に挑戦したり等の飾り気は全くない。 制服も着崩すことなく、 校則をきちんと守った清楚な制服姿が西森のスタイルだ。 キリッとした表情が真面目さと知的さを物語っていて、 男側からすると、隙がなくて近寄りがたい女子の部類に入る。 さらに、いつも無表情か怒った顔しか見せてないので、 気軽に声さえかけられない。 でも・・・ 西森もニコッと笑えば、 年相応のかわいい女の子になると思うのだが・・・。 いやいや、今はそんなことを考えている場合ではなく、 お説教タイムである。 「ええと・・・、 西森、 長くなる話なら職員室で聞くけど・・・」 「いえ、 そんなにお時間は取らせませんから 」 「は・・・はい・・・」 女子高生に威圧されるおれ。 西森はおれをにらみながら話し始めた。 「授業のことなんですけど、 生徒達から邪魔されても スムーズに進めてくれませんか? いちいち中断していたら、 どんどん遅れが生じてきて こっちに迷惑がかかっているんです。」 はい、おっしゃる通りです・・・。 「文系だからって、 甘く見ないでくださいよ。 大学受験には必要な教科なんですから」 西森にズバズバと 自分の「悪い点」を指摘され、 心がズキズキ痛む。 そして、ただただ謝るしかなかった。 「ご・・・ごめん・・・ 」 西森はもう一度キッとおれをにらみつけて、 「以後、気をつけてくださいね!」 と強い口調で言うと、 ツカツカと歩いて教室に戻っていった。 こ・・・怖かった・・・。 先生なのに、 生徒にこてんぱんに叩き潰されるとは ほんと情けない。 でも、西森の言う通り 授業も少し遅れているし、 生徒達に迷惑をかけていることも確かだ。 がっくりと肩を落としていると、 「あ、高山ちゃん! 夏菜にお説教されていたの?」 と、クラスの女子たちが わらわらとおれの周りに集まりだした。 「別に説教されていたわけじゃねーよ」 「じゃあ何を話していたの?」 「授業をスムーズにやってくれないか、 っていうお願いだ」 「それ、説教じゃん」 ま、確かに説教だったが・・・。 「でも、ま、 夏菜は勉強に必死だからね、 私達と違って。」 一人の女子が何気につぶやいた。 確かに、西森の勉強にかける熱意は 他の生徒以上のものがあることには気づいていたが、 どういう背景が隠されているかまでは おれは知らなかった。
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