第3話:ドキドキ初デート

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変? これは『良い意味』にとらえたらいいのか? それとも『悪い意味』にとらえたらいいのか? 聞くのが怖い気もしたが、勇気を出して聞いてみた。 「人生が『変になった』って・・・、それは・・・、トラブルに巻き込まれて『予想外の人生』になったってことか?」 すると西森は大きくうなずき、 「トラブルもいいところですよ。 私の高校生活、『勉強』に追われるだけの静かな毎日だったのに、先生が現れてから、感情がジェットコースターみたいにグルグル振り回されて、落ち着くヒマもないんですから」 と、痛いことをズバッと言い放った。 さらに追い打ちをかけるように、 「今日だって、親には『図書館で勉強してくる』ってウソついてやって来たんですよ。 遊びに行く、なんて言ったら、絶対許してくれないと思ったから。」 と言ったため、おれは頭を石で「ガン!」と殴られたような衝撃を受ける。 そ・・・そうだったんだ・・・。 西森、あの「怖いお母さん」にウソをついてまで、おれとのデートについてきてくれたんだ・・・。 今さらながら、自分の身勝手さを後悔してしまった。 「ご・・・ごめ・・・」 と、謝ろうとしたところ、西森が急に左腕を「ピシャッ!」と軽く叩いてきた。 「!?」 館内はすでに夕方から夜になっていたので、暗くて西森の表情はちょっとよく分からないが、たぶんこっちをにらんでいるようだ。 「あやまらないでください。そりゃ、先生が『プラネタリウムに行きたい』なんて言い出さなかったら、私は家で大人しく模試の勉強できてたと思います。 でも・・・」 「でも・・・?」 「でも・・・」 西森はギュッとおれの上着をつかむと、 「こんな風に、お友達と遊びに出かけることなんて私の人生の中には皆無だったから、うれしかったんです!」 と言った。 え? う・・・うれしかった!? 本当に、そう思ってくれているのか!? 親にウソつかせてまで外に連れ出して後悔の気持ちしかなかったけど、本当にうれしかったと思ってくれているのだったら、こんなにうれしいことはない! 上着をまだギュッと握りしめている西森の手に、おれはソッと手を重ねる。 「手・・・つないでいいか?」 「へ?」 一度は、無理やりキスまでしようとした男が、「手をつないでいいですか?」と改めて聞くのもどうかと思ったが、でも、西森が嫌なことはやりたくないから、とりあえず伺ってみる。 西森は少しモジモジしながら、 「い・・・いいですよ・・・」 と答えた。 なんだろう・・・、 プラネタリウムの『星空マジック』なのだろうか? 西森が素直に答えてくれるなんて・・・。 おれは、西森の小さな手をそっと握りしめる。 すると西森も軽く握り返してきた。 そしてそのまま、星空を仰ぎ、再び星の説明を始めた。 西森もおれの説明に耳を傾ける。 最初はお互い、軽く手を握っていただけだったのだが、自然と手が絡み合っていく。 言葉は交わしていない。 でも、手でお互いの気持ちを探り合っているようだ。 そして、プラネタリウムが終わる頃にはおれと西森の手は『恋人つなぎ』になっていた。
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