第1話:苦手な優等生

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第1話:苦手な優等生

「最近、教師が生徒に手を出すという 不祥事(ふしょうじ)が多いわけでして、 うちの学校でも間違いが起こらないように 『禁止行為 三箇条』を作りましたから」 1:女生徒と二人きりにならない 2:女生徒と二人で外に遊びに行かない 3:女生徒に特別な感情を持たない そう言いながら教頭先生は、 おれの目の前の黒板に 「バン!」と 三箇条の書かれた用紙を貼りつけた。 「いいですね! 教師という立場を、絶対忘れないように! 特に高山先生、気を付けてくださいよ!」 「は・・・はい・・・」 なんだよ、 これじゃあ、 まるでおれが生徒に手を出すみたいな 言い方じゃないか。 『生徒になんか まだ一回も手なんか出していませんよ』 と言ってやりたかったが、 そこはグッと抑えて、 「はい・・・」 と苦笑したおれだった。 朝礼が終わり、 腑に落ちない気持ちを抱えながら 廊下を歩いていると、 生物担当の山根先生が 後ろから声をかけてきた。 「高山、 あの三箇条、 まるで おまえのために作ったようなモノだったな。 ハハハハハ」 「山根先生・・・、 笑い事じゃないっすよ・・・」 大笑いする山根先生をキッとにらみかえす。 山根先生は、笑いを押し殺しながら、 「すまん、すまん。 でも、仕方ないか。 だって高山の容姿は どう見たって先生っぽくないもんな。 身長も高いし、 雑誌のモデルみたいなイケメンで、 おまえが学校に初めて来た時は 女子生徒達が一斉にざわめいたのを おれは今でも覚えてるよ」 と言った。 山根先生が言う通り、 今までの人生、 確かにおれはモテた。 学生時代も 彼女がいなかったことは ほとんどなかったし、 浮気がバレて大変な時もあった。 でも、教師になってからは 仕事が忙しくて 恋愛どころではないのだ。 おまけに、 ここは県内でも有数の進学高校。 おれの周りには 女子高生ばかりで、 「かわいいか?」と聞かれれば 確かにかわいいが、 全くの恋愛対象外である。 なので、山根先生に言ってやった。 「高校生なんて、まだまだ子供。 おれは大人の女性がいいんです」
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