第3話:ドキドキ初デート

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第3話:ドキドキ初デート

西森と(仮)だけど『恋人同士(?)』になってから、 初の登校日がやって来た。 今日からどんな素晴らしい毎日が始まるのかと思うと、 ウキウキ気分が止まらない。 「おはようございます!」 いつも以上に明るく元気にあいさつをして職員室に入ると、 他の先生から、 「何かいいことあったの?妙にご機嫌だね」 と声をかけられる。 「えっ、そうですか!?」 相変わらず『感情』が顔に出やすいようで、 『幸せ気分』がダダ漏れ状態のようだ。 いかん、いかん! おれはホッペをたたいて、気合を入れる。 ここは学校だ。 西森との関係は絶対ヒミツにしないといけない。 とにかく西森に迷惑をかけてはいけない。 それには、おれがヘマをしなければいいのだが、 いつも「ここぞ」という場面で失敗を繰り返すクセがあるからな・・・。 そんなことを1人いろいろ考えていると、 担任の吉川先生が「おい、高山」と声をかけてきた。 「吉川先生、おはようございます」 おれがあいさつをすると、吉川先生は、 「急な話だけど、今日の朝のHR、 おまえが代わりに行ってくれないか?」 と言ってきた。 「HR? 別にいいですけど・・・」 軽く返事をしたものの、待ってくれ。 朝のHRって、 西森とすぐさま顔を合わせることになってしまうじゃないか!? 会うのは3時間目の地学の授業だと思っていたので、 心の準備がまだ出来てない! なぜかオロオロしているおれの様子に、 吉川先生は「?」と首をかしげるが、 「すまないが、このプリントを配って、 来週までに提出するように伝えておいてくれ。 詳しい内容は、また後でおれから生徒達に説明するから、 とりあえず配るだけ配っておいてくれないか?」 と言いながら、プリントをおれに渡す。 「はあ・・・」 おれは手渡された用紙に目をやると、それは『進路希望調査』の内容だった。 「進路希望・・・、超真面目な内容じゃん・・・」 西森達はまだ高校2年生だが、 そろそろ大学受験の進路を考え始める時期でもある。 西森と付き合えることになって浮かれ気分のおれだったが、 現実はそう甘くはない。 西森にはちゃんと勉強してもらいたいし、 おれもその邪魔にならないように最大限の努力はしようと思う。 なので、今は浮かれた気持ちを封印し、 シャキッと背筋を伸ばし『先生』の立場として教室に向かった。 でも・・・ 心は素直なモノで、教室が近づくにつれ、 どんどん心臓の音がドキドキ高鳴ってくる。 西森に会えるのはうれしいが、何かヘマをやらかしそうで怖い。 『確か西森の席は・・・』 おれは頭の中で、西森の席を思い出そうとしていた。 西森の席は、ちょうど真ん中の後ろの方だったから、 なるべくそこに目を向けないようにすれば、 おれも冷静さを保てるだろう。 いや、でも完全に無視すると 西森から『無視された』と文句を言われるかもしれないから、 ちらっと一瞬だけでも目を合わせた方がいいのだろうか・・・。 そんなくだらないことをウジウジ考えているうちに、 いつの間にか教室の前までやって来ていた。 教室からはワイワイと騒ぐ声が聞こえてくる。 「またあいつら、騒いでいるな」 そう思うと、急に『先生』へのスイッチが入った。 おれはガラッと勢いよくドアを開け、 「ほら、HRやるから静かにしろよ」 と言って教室に入る。 「あれ?高山ちゃんじゃん。吉川先生は?」 担任でなく副担任がやって来たので、 生徒たちは不思議そうな顔でおれを見ている。 「吉川先生は用があるから、代わりにおれが来たんだ。 プリント配るから、後ろの人に回してくれ」 そう言いながら、右側の席からプリントを渡していく。 ここまでは順調だったが、ちょうど真ん中の列に来た時、 ふと西森と目が合ってしまった。 西森のことだから、 いつもと変わらないポーカーフェイスのままだろう、 と思っていたのだが・・・ 西森は急にビクッとすると、顔を少し赤らめて下を向いてしまった。 「えっ!?」 西森の予想外の反応に思わずおれもビックリして、 手に持っていたプリントを床に落としそうになる。 ちょっと、西森! 何、そのかわいい仕草!? 頼むから、今ここでそんな表情をするのはやめてくれ! 女子はともかく、 おれ以外の男には、西森のかわいい表情を絶対見せたくないんだ!
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