嫌よ嫌よは

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

嫌よ嫌よは

「どうしてそう、俺を嫌うのさ」 「前にも言わなかったかしら?」 「さてね。俺は都合の悪いことは記憶を消してしまう主義なんだ」 「近づかないで。外堀を埋めて選択を迫るところが気に入らない」 「そんなことしたかな?」 「出会った時もそうだったわ。合コンでいつの間にかカップル扱いにさせられていたでしょう。私、目当ての人がいたのに。それであとから聞いたらあなたが周りに頼み込んだらしいじゃない。しかも男性陣には私の悪口を流して! それだけじゃないわ。あなたはモテないことに悩んでいた私にアドバイスと称してあなた好みの服やアクセサリーを勧めていたのよね? 危うく騙されるところだったけど、前にあなたと付き合っていたという人が私に忠告してくれたのよ! あなたと二人切りになるのは危険だって。 今回の無人島の旅もそうよ! あなたには不信感しかなかったけど、親友のエリのお願いだから私とエリとエリの彼氏のカナヤくんとあなたの4人で来たものの、挙句の果てには絶海の孤島に取り残されて遭難! 船着き場にあったフェリーが消えてしまった!しかもそれだけで終わらなかった! エリとカナヤくんがいなくなったと思ったら、次に見た時には死体になっていた! カナヤくんは海で溺れて、エリは獣に食べられた!二人とも死んでしまった。殺したのはあなたでしょう! カナヤくんが死ぬ直前まで一緒にいたのはあなただし、エリが獣に襲われた時、あなたは私に死体を見るなと言ったわね? けど私見たのよ、死体を掘り起こして! 彼女の頭には殴られた痕があった! 殺したのはあなたなんでしょう!?」 「なんだバレていたのか」 「そんな……。いけしゃあしゃあと!」 「僕はただ、君と二人きりになりたかったんだ。本当は全世界を滅ぼして地球でたった2人になりたかったんだけど、俺じゃあこれが精一杯だったんだよ」 「何をおかしなことを! 二人きりになるために人殺しまでするなんて!」 「ははは。大したことじゃないよ。そうだここは世界と切り離された絶海の孤島だ。俺たちにとったら、世界は滅んだも同然だよ。もう僕と君しかいない」 「世界にたった2人になったってあんたのことなんて選ばないわ」 「嫌よ嫌よも好きのうちになるよ」 「嫌よ嫌よは、イヤよ!」
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!