たこ焼き

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たこ焼き

僕は小心者である。 どのくらい小心者かが如実にわかる出来事が数日前に起こった。 スーパーで買い物をしていた際、半額になっていたたこ焼きを見つけ、「ラッキー」と思いカゴに入れるも、家に帰ってふとレシートを見るとたこ焼きが定価の値段で打たれていたのだ。こういう時、普通の人なら即クレーム案件なのだろうけど、お察しの通り僕は店に言うことができなかった。 小心者でも、さすがにそのレベルは言えるという人もいるだろう。でも僕は小心者を拗らせた故、物事を変な方向にねじ曲げて考える癖がついてしまったのだ。 たとえば今回においては、もし僕がクレームを入れたらレジの人がこっぴどく怒られてしまうのではないかとか、家から徒歩三分の一番よく利用するスーパーでの僕のあだ名が半額たこ焼きになってしまうのではないかとか、そもそも半額のシールは誰かのいたずらで貼られてしまったのではないか、とか。 結局、あれこれ余計なことを考えているうちに日も暮れてしまい、「もういいや」となってしまったのである。 自分でもなんてバカなのだろうと思う。小心者なんて性格は基本的に損ばかりするし、得なことなんて一ミリもないのに。 でも僕は昔からこうであり、二十六年間共存してきた小心者という厄介な汚れは落とそうと思っても頑丈にこびりついてそう簡単にはのけることはできなくて、今日も僕の一部として存在しているーー。 なんて話を居酒屋の席で同僚の西原にしたら、手を叩いて大笑いするもんだから「あぁ、やっぱそうなるよなぁ」とうなだれていると、西原は涙を拭いながら「すいません」と店員を呼んだ。 「追加でたこ焼き一つください。あと、生ビールも」 「嫌がらせかよ」 枝豆を頬張りながらふてくされる僕に、西原はジョッキに残っている僅かなビールを流し込んでから満足気な表情を浮かべた。
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