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「んな訳ねーだろ。今日は俺のおごりだ」
「え、いいのかよ。だって、最近奥さんに小遣い減らされてるんだろ?」
「いいから、いいから。気にすんなよ。たまには俺に甘えろって。な?」
そう格好つけて言った西原だったが、こみ上げてくる笑いに耐え切れず、肩が若干揺れている。僕はその様子を見てある疑念を持った。
「さては西原、面白がってるな? 人が真剣に悩んでいるというのに」
「いや、それは違う。断固として。俺はお前のことを一友人として応援している。それだけは信じてくれ」
「……」
疑いの眼差しを向ける僕を西原はなだめた。
「そんな目で見るなよ~。俺とお前の仲だろ?」
「はぁ、相談相手間違えたわ」
「お待たせしました。たこ焼きと生ビールです」
西原は店員から「どうも~」とジョッキを受け取ると、僕の飲みかけのレモンサワーにごつっとぶつけた。
「小心者は悪いことではない! はい、カンパーイ!」
「いやいや、悪いことだから悩んでるんだろ。勝手に乾杯するな。まぁでも、西原には俺の悩みなんて理解できないだろうけど」
「そんなことはないぞ。俺だってな、悩みくらいある。もしかしたらお前のそれよりもっと酷いかもしれない」
「ホントかよ? そんなの聞いたことないけど」
「あぁ……、ん、わッ、なんだこれ!」
突然、西原は一口で頬張ったたこ焼きをでろんとお皿に吐き出した。
「なにしてんだよ、汚いな」
「違うんだって! これ半生よ、半生! 冷凍たこ焼きがちゃんと解凍できてないんだって!」
元々大きな目を更に見開いて僕に訴える西原。
「マジ?」
「マジ! 確かに周りは若干あたたかいけどな、中がひんやりして冷たいんだって! 俺が頼んだのは冷やしたこ焼きじゃねぇっての!」
西原はそう言うと、何の躊躇もなく手を挙げ店員をよんだ。
「およびでしょうか?」
「あの、このたこ焼き半生みたいなんすけど」
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