あなたを嫌いにさせてくれ

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あれは、忘れもしない入学式の日。 この高校の入学式の為なら、国は桜の開花日の操作も厭わないのではと思うほど、嘘みたいに完璧な桜が咲いていた。 暖かくて穏やかで、青空はどこまでも澄んでいた。 草木は萌え、花は咲き小鳥が歌う。 私の人生は、決して完璧だとは言えないスタートだけれど、自分自身の力で舵を切り、良い方向に進められていると自負していた。 現にこの、幼稚園から大学までエスカレーター式で編入はほぼ不可能、とまで言われた女子高に、試験と面接と素行調査と中学提出の内申書の判断により、特待生での編入が許可されたのだから、我ながら相当な者だ。 もちろん、新入生代表の挨拶をするように連絡を貰っているし、文面の確認も頂いた。 あとはこれを名前が呼ばれた時に檀上に上がり、広げ、読み上げ、頭を下げ降りれば完璧だ。 私の人生の晴れ舞台は、今日この瞬間から始まるのだ。 「続きまして、特待生代表挨拶、山田幸(やまださち)」 私の名前が呼ばれる。平々凡々な名字に、覚えやすい名前。 ハイハイ、任せてね。まあ、この超ウルトラスーパーお嬢様集団、箱に入れられて育てられた激カワ女子高生に、ザルどころか枠で囲われて育てられた一般庶民が一泡吹かせてやりますよって、あれ? 私がやるの、新入生挨拶じゃなかったっけ?
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