隣の絵描きは憎い

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 人生で一日くらいは、だれか一人のことを憎むだけで終わる日がある。僕にとってそれは、高校二年の秋だった。  僕は美術部で、17歳の夏を一枚の絵にささげた。我ながら暗い絵だと思ったけど、出来自体は満足のいくものになった。顧問の先生の勧めであるコンクールに応募して、10月に結果が伝えられた。  佳作。たった二文字のその言葉は、けれど僕にとって人生で初めて貰った賞で、柄にもなくうれしかった。いつもより少しだけ大きな歩幅で教室に戻ると、妙にクラスがざわついていた。 「すげーじゃん!金賞って、一番ってことだろ!」 「なんだその頭悪そうな発言。まあ、俺は天才ですから!」 「賞とった絵って、あれでしょ?『あなたの好きな道』だっけ?美術の授業でやったやつ」 「そうそう。適当に描いたやつだったんだけど。いやー、いけちゃうもんだね」  ざわめきの中心には彼がいて、なんてことないぜって雰囲気を出していたけれど、やっぱり少しだけ誇らしそうに、いつもより少しだけ早口で話していた。僕はその横を通り過ぎて、自分の机に突っ伏して休み時間が終わるのを待った。
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