東京にも、カラスはいた!

2/2
前へ
/14ページ
次へ
 東京駅に着いたのは、夜がふけたころだった。 「う……。これが都会のニオイか」  夜だというのに、昼の様に明るい。しかも、何となく腐敗した獣のニオイがしてくる。 「なかなか、くせえな。獲物でもいるの、か 」 !!! 「ひ、人が歩いているじゃねえか。田舎じゃ、こんな時間に歩いているのはタヌキか、野良ウサギしかいねえっていうのに」  オレはきょろきょろとしながら、ネオンという名の常夜灯の中を人の流れに逆らって歩いた。  カァ、グァア 「ん、なんだ? うおっ」  オレの頭を何かが横切った。 「カラスか。都会にも、生き物がいるんだな。さすがにムササビは飛んでねぇな」  そして、何か薄暗い横道に入り、湿っぽくて、タバコと汗のニオイが染み込んだカプセルホテルに入った。 「都会のニオイは、なかなか刺激的だな」  が、そんなことはどうでもいい。 いよいよ、明日。念願の通勤地獄を味わえるのだ。  いや、オレにとっては通勤天国だ。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加