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東京駅に着いたのは、夜がふけたころだった。
「う……。これが都会のニオイか」
夜だというのに、昼の様に明るい。しかも、何となく腐敗した獣のニオイがしてくる。
「なかなか、くせえな。獲物でもいるの、か
」
!!!
「ひ、人が歩いているじゃねえか。田舎じゃ、こんな時間に歩いているのはタヌキか、野良ウサギしかいねえっていうのに」
オレはきょろきょろとしながら、ネオンという名の常夜灯の中を人の流れに逆らって歩いた。
カァ、グァア
「ん、なんだ? うおっ」
オレの頭を何かが横切った。
「カラスか。都会にも、生き物がいるんだな。さすがにムササビは飛んでねぇな」
そして、何か薄暗い横道に入り、湿っぽくて、タバコと汗のニオイが染み込んだカプセルホテルに入った。
「都会のニオイは、なかなか刺激的だな」
が、そんなことはどうでもいい。
いよいよ、明日。念願の通勤地獄を味わえるのだ。
いや、オレにとっては通勤天国だ。
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