熱情と輝き

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 「こんにちは、紗羅さん、美紗さん。今日はあなたたちにあるお誘いを持って来ました」  慎一さんは父さんが昔から懇意にしていた画商の黒田のおじさまの一人息子で、今は画廊で働いている。慎一さんとの付き合いは小学生のころからだから、もうずいぶん長い。黒田のおじさまには、父さんのスケッチ旅行や各地でのアートパフォーマンスの段取りもお願いしていて、そうした旅行には双方の家族を連れて出かけるのが常だった。旅先で一緒に観光地を回るだけでなく、大人たちが忙しくしている時には、子供たちだけで辺りの探検に出たりもしていた。 「来月、新進の作家さんを売り出すための合同展示会を行います。八名の方の参加が決まっているのですけど、よかったら、紗羅さんと美紗さんも作品を出品されませんか」  思いがけない話に姉さんもあたしも目を丸くした。 「あの、いいんでしょうか? 私たちはまだ学生ですけど」 「問題ありません。他の作家の中にも学生の方がいらっしゃいます。紗羅さんと美紗さんの絵は先日アトリエで見せていただきました。お二人の絵は展示して多くの人に見てもらうだけの価値があると思います」  いきなり言われても実感はなかった。姉さんはともかく、あたしの絵にどれだけの価値があるのか……。 「ただ、スペースの関係でお二人は、それぞれ一点ずつの出品になります」  その言葉で合点がいった。他の作家さんの作品はそれぞれ数点が提示されるのだろう。あたしと姉さんはおまけみたいなものなのだ。それでも、会場に他の作家さんの作品と一緒に作品が並ぶ。力量が劣ったものを出せば、来場者から厳しい目を向けられるだろう。
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