【イジメっ子】

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{1} 「いやぁ、起きててくれたのか!ありがとな!先に寝てて良いって電話で言ったのに」 仕事の残業で遅くに帰宅した俺は、 妻の百合子が起きて待っていてくれた事に感謝しながら声をあげた。 「いえいえ。あなたも毎日、遅くまでお仕事ご苦労様」 百合子が、アクビを噛み殺しながらも微笑んで言った。 「よし!じゃあ早速、夕飯を頂くとするか!」 俺は、ネクタイを緩めて食卓に着くと、テーブルの上の肉じゃがと白飯を食べ始めた。 「うん!やっぱり美味いなぁ!」 壁時計を見ると、夜の11時である。 こんな遅い時間にも関わらず、温かくて美味い夕食を食べられる事に俺は感謝と幸せを感じた。 「そういや… 綾香とお母さんは、もう寝たんだよな」 「そりゃそうよ。もう、こんな時間ですもの」 「ハハ、違いないや」 今年で小学校二年生になる一人娘の綾香と、一緒に同居している百合子の母…つまりは俺から見ると義理のお母さんは、二人とも姿が見えなかった。 さすがにこんな遅い時間だ。 二人とも、もうとっくに床についていて当たり前である。 と… 「あのね…あなた。 実は、今日こんな事が有ったのよ」 不意に、百合子が夕食を頬張る俺の真向かいに座って口を開いた。 「うん?何か有ったのか?」 「ええ…まあね」 妻の話によると… 今日の放課後、綾香がクラスの女友達と別れて帰宅の途に着いていると… いきなり! どこからともなく同じクラスの男子生徒が走って来て!後ろからタックルを食らわして来たんだそうだ! それに対して!普段から勝ち気な綾香は「うわっ!なっ、何するのよ?!」 と、その男子生徒に対して、逆にエルボーを食らわし!その男子は泣きながら逃げ帰って行ったそうである! 「へぇ、綾香もなかなかやるじゃないか。さてはその男子、綾香に気が有るんじゃないのか?」 俺は一人娘の『武勇伝』に思わず、ニヤニヤしてしまった。 「もう!笑い事じゃないわよ!」 百合子は、語気を荒げた! そして、話を続けた。
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