第3話 6月、間借りカレーと

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 ほとんどの仕込みは家で終えてきているとはいえ、慣れないキッチンでの作業は思ったより時間がかかった。調理の準備をしている間も、中村から何度も開店後のオペレーションの注意を聞かされる。 「基本的にお前は調理に専念していいから。会計は俺がやるし、基本的に接客も俺がやる。ただ、俺の手が空いていない時にあんまりお客さん待たせるのもアレだからそん時は注文取りとか頼むな」 「注文って言ってもカレーだけだよ」 「いや、ほら大盛りとかご飯少なめとか色々きっとあるだろ」 「あぁ。水くださいとかね」 「そうそう」  仕上げたカレーからだんだんと薫りが立ってくる。 「もういいんじゃないか?カレー」  そう言いながら中村がお腹をなでる。もう少しで11時。11時半オープン予定だからそろそろだ。 「試食する?」 「当たり前だろ!!」  中村が機敏な動きで皿を差し出す。いつの間に用意してたんだよ。
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