闇の子、光の姫

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 僕と同じくらいの年の、簡素だがどこか気品を感じさせる白い服に身を包んだ少女。その少女が、光をその身に浴びながら、岩の上に座っていた。  どれくらい彼女を見つめていただろうか。彼女はふと僕の存在に気付き、少し驚いたような顔をしてから、岩を降り、僕のほうへ歩いてきた。 「ねぇ」  少女が話しかけてくる。腰まで届くほど長い黒髪がふわりと揺れる。 「キミ、誰?」  その質問に答えようと僕は口を開き、そして閉じて、また開けた。 「えと……」  何と答えればいいか、分からなかった。  そんな僕の様子を見て、少女は少し笑ってから、「じゃあ、私から」と言って、手近な岩に腰掛けた。 「私はルミエラ。ルミでいいよ」  そう言われて初めて、僕の返答が決まった。 「僕は……リオネル」 「リオネルか。じゃあ、リオだね」  自分の名前と同じように勝手に僕の名前を略して、彼女はまた笑った。 「こっちおいでよ、リオ」  彼女が自分の左隣を示すので、僕は近寄ってそこにゆっくり腰を下ろす。その一連の動きを見て、みたび彼女は笑った。  それから、ときどき雲間に隠れる太陽を見上げて、彼女は言う。 「ここ、気持ち良いでしょ」  普段は人なんて来ないんだけどな、と続けて、彼女はふふっと笑う。そして、そのまま黙って空を見ていた。  僕も空を見る。右腕のあたりがピリピリして、むず痒かった。  しばらくして、彼女は突然立ち上がった。 「そろそろ行かなきゃ」  そう言って彼女はさっさと歩き始め、少し離れてから立ち止まり、僕のほうを振り返る。 「また来てね、リオ」  小さく手を振ってから、彼女は駆け出す。僕がここへ来たのとは別の、もっと鬱蒼とした道に入り、あっという間に姿が見えなくなってしまった。 「……」  僕も立ち上がり、元来た道を戻るため、歩き始めた。  太陽は真上で燦然と輝いていた。
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