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「おにいさま、それ本当?」
自身に課せられた残酷な運命を恐らくはあまり理解していないまま、少女は男に問う。
「本当だよ。ほら、見てごらん」
男はそう言って、窓から見える空を指差す。少女が空に目を凝らすと、小さな黒い点がいくつか、高速で移動しているのが見えた。
「あれはなぁに?」
「戦闘機という名前らしい。空から人をたくさん殺す道具だ」
男は少女に、戦争という概念を教えて聞かせた。少女は分かっているのか分かっていないのか、それをふんふんと頷きながら聞いていた。
「闇が溢れると、人は戦争をして殺し合うし、天気は狂うし、動物は暴れるし、地面も揺れる。でも、それはまだ始まりでしかない」
脚をさすりながら、男は続ける。
「あまりにも溢れ過ぎた闇は、表に飛び出ていってしまう。世界のあちこちが、直接闇に壊されてしまう」
「それになったらたいへん?」
「あぁ、大変だ。だからルミ姫がそうならないようにするんだ」
「ふぅん……」
話のほうにはあまり興味なさそうにしながら、少女はまだ窓の外を見ている。さっきのとは別の戦闘機がまたいくつか、空を横切っていた。
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