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――…ある屋敷から女の子の赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。
その屋敷はクレメンティア家。王族に近い位の爵位を持っており、城では宰相を務めている名家である。
「産まれたか」
「はい、旦那様。可愛らしいお嬢様ですよ」
メイドの一人が主・フィスカルにご息女が誕生した事を報告した。
「で、その子は何処に?」
「アリシア様の元です。スヤスヤと可愛らしく寝ておられます」
「そうか、そうか。では、時間が出来次第アリシアの元に出向くとしよう」
フィスカルはそう言うと執務に励んだ。
今宵は満月だったようで、何処かの森から狼の遠吠えが聞こえてきた。
「―…フェンリルか。うちの子の誕生をお祝いしてくれているのだろうか」
執筆しながらそう思った。
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