あなたなんて嫌いだよ

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「あなたなんて嫌いだよ」 手にした小さな道具を、 思わず床に投げつけそうになる。 たいした用でもないのに頻繁に呼び出して。 寝ようとしてるのに、 急に大きな音を立ててみたり。 期待してるときに限って、 欲しい連絡の代わりに 違う連絡をくれる。 わかってる。 本当は私が悪いんだけどね。 ちょっとコントロールすれば済むだけ。 それはそうなんだけれど。 「あなたなんて嫌いだよ」 どんなに苛立ったとしても、 私は手にした道具を投げつけたりできない。 だって、失う代償は大きいから。 頼りにはなるんだ。 あなたがいるからこそ 私はこの都会で迷子にならなくて済む。 お財布忘れちゃっても なんとかお昼ご飯を食べられるし。 でもさあ…… 子どもたち、若い子たちが、 あなたのお友だちを持ち歩いていると。 ちょっと不安になってくる。 私は大人だし、仕事もあるし。 自分である程度、コントロールするけど。 脳ミソのブレーキは、 使わないと育たないんだよ? あなたなんて嫌いだよ。 あなたも、あなたの仲間たちも。 失ったら心細くなるから、 みんな、やめられないもの。 遠く離れたあの人から届いた画像。 不安だった心が、 急に安心感に包まれる。 ほら、こうやってまた罠にはまる。 だけど、私たちにはもう、 あなたの存在が必要なんだ。 どうしても繋がりたい人がいるから。
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