【コインランドリーの先客/ある夜のヤマトとチャコ】

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{1} 「ううむ…。 どの怪談も、何となくどこかで聞いたような話だなぁ。特にオチも無いし、何かモヤモヤが残るし…」 俺は、その本のページをめくりながら、ため息混じりに呟いた。 『その本』とは… 俺の恋人、チャコの部屋の本棚に有った『芸能人たちが語る心霊体験集』なる文庫本である。 ふと、壁時計を見てみると…現在、午後六時。 窓の外は、まだ明るい。 ここは、そのチャコが住んでいるアパートの一室。 と言うか… 現在、俺…ヤマトとチャコの二人が一緒に住んでいるアパートと言った方が… まあ、正確な表現になるだろうか。 そう。 現在、俺とチャコはこのアパートに同棲しているのだ。 実は、チャコは目下、小説家を目指していて、せっせと作品を書いては、様々なクリエイター・サイトに投稿する日々を送っている。 しかし…最近、彼女はどうやらスランプみたいだ。 チャコの『執筆活動』は、もっぱら日中の時間帯。 そして、夕方になると居酒屋のバイトに出掛け、深夜まで帰って来ない。 だから、その間は俺がこの部屋で留守番をしているという訳だ。 チャコは小説家を目指しているだけあって、部屋の本棚には、実にたくさんの文庫本や単行本がずらりと並んでいた。 俺は、彼女がいない間は、もっぱらそれらの小説を読みながら時間を潰す。
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