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 私がシャワーを浴びて部屋に戻ると、先に浴びた蒼空くんは椅子に腰掛けて待っていた。  ベッドに上がり、部屋着のワンピースを脱いで布団に潜り込む。ジーンズとシャツを脱いだ蒼空くんも、後から潜り込んでくる。  彼は覆い被さるようにしてキスをくれた。すごく緊張しているみたいだ。そして、キスが終わると、困ったような顔をして言った。 「あの、由梨姉、俺……」  なんとなく言いにくそうにしている。 「ひょっとして、初めてなの?」  先回りをして聞いた。  彼は一瞬驚いた顔をしたが、 「ぇ?…….うん、まぁ」  曖昧にうなずいた。  私は小さく笑った。 「いいよ。そんなの気にしなくても」  可愛いと思った。  そして、覆いかぶさった彼の耳元に囁いた。 「脱がして。それから、蒼空くんも……」  言われたとおり、彼はブラを外し、ショーツを脱がしてくれた。  そして彼も自分の下着を脱ぎ、ふたりは裸で抱き合った。 「どうしたら感じるか、教えて」  甘えるように言われて、私はちょっと困った。  いまさら初めての男の人とするなんて思ってもみなかった。私は結婚していたわけだし、経験はそれなりにある。でも、男の人、それも蒼空くんに教えてあげるなんて思うと、とても恥ずかしい。でももう引き返すことなんかできない。蒼空くんが初めてなら、私がリードしてあげるしかない。 「もう一度キスして。ゆっくりと、優しく、長く、よ。女の人を感じさせるには、それって、とても大切なことなの」  私が言うと、彼はふたたびキスをくれた。教えられたとおり、ゆっくり優しく、そして長く。 「ん、ふ……」  甘く誘うように、私から舌を挿し入れた。蒼空くんもそれに応えて絡めてくる。  同時に彼の手を取り、胸へと導いた。乳房を優しく揉みしだかれ、鼻の奥で甘い喘ぎを漏らす。 「そう、上手」  唇を離し、甘く囁いた。  胸が苦しいほどドキドキしてる。  相手が蒼空くんであること、そして私が彼を導いていることに、たまらない興奮を感じていた。  初めは緊張していた蒼空くんだったけど、すぐに硬さも取れ、私が教えるとおりに優しく愛撫をしてくれた。初めてというからもっとぎこちないと思ったのに、触り方も柔らかくてうっとりするようなタッチだ。 「なら、次はそこを舐めて」  たかぶる気持ちのまま、甘く彼にせがんだ。  蒼空くんは、そっと乳首を口にふくむと、舌の先でチロチロと舐めてくれた。 「ぁ……、もっと、転がすみたいに、ぁッ……、そう、上手よ」  うわごとのように言いながら、自分から胸を反らし、乳首を彼の口に押しつける。  私の体は、信じられないくらい敏感になっていて、そこに甘く歯を立てられただけで、 「ぁ……、あんッ!」  思わず大きな声を漏らしてしまうほどだった。  すぐに我慢ができなくなってしまい、彼の指を密かな部分へと導いた。しどけなく濡れたそこにあてがい、一番感じる場所を教えてあげると、彼は指の先でそこを可愛がってくれた。  ゆっくり  優しく  長く  自分がそう教えたくせに、そんな彼の指の動きに私自身が焦れてしまっていた。 「お願い。もう来て……」  切羽詰まった声でせがんだ。  すると、蒼空くんは私の胸から顔を上げ、困ったように言った。 「でも、あれ、持ってないし」 「あれって?」 「コンドーム」  ボソッと言うを聞いて、私は思わず笑ってしまった。初めてのくせに、なんて真面目なんだろう。 「大丈夫。私がどうして戻って来たのか知ってるんでしょ?」 「うん、でも……」 「だからいいの。ねぇ、もう待てない。お願い」  甘くねだると、蒼空くんはそのまま私に入ってきた。 「ぁん……ッ!」  逞しい彼に貫かれ、私はいっぱいに体を反らせ喉の奥で喘いだ。  ゆっくり深く動き始めた彼の腰が、やがてテンポよいリズムで私を責め始める。  そうして、激しく突き立てられた末に、蒼空くんを包み込んだまま私は果てた。  同時に彼もまた、私の中で思いを遂げたたのだった。  そのあと少しの間、私は、彼の腕の中で余韻に浸っていた。  蒼空くんは柔らかく髪を撫で、啄むようなキスをくれた。 「ねぇ、気持ちよかった?」  聞いてくる。 「うん、とっても」  私は、見つめられるのが恥ずかしくて、彼の胸に顔をよせた。 「蒼空くん、上手なんだもん。初めてとか思えないくらい」  うっとりと言うと、 「それ、本気にしてたんだ」  ぽそっと彼は言った。  驚いて顔をあげると、決まりの悪そうな顔をしてる。 「本気にって、違うの?」 「当たり前だろ、俺のこといくつだと思ってるんだよ」  たしかに、彼はもうすぐ25歳、それなりにモテそうだし、経験が無いほうがおかしい。女の子に興味が無さそうという良子おばさんの言葉を真に受けていたけど、彼の性格から言えば、母親の知らないところでつきあう子がいたっておかしくない。 「ひどい、騙したわけ?」 「騙すつもりなんかなかったさ。由梨姉が先に言ったんじゃないか」 「うなずいたじゃない」 「そうだけど、だって、元人妻を相手に上手くできるか自信なかったし」 「なによ、元人妻って」 「だってそうじゃん」  私はなにも答えず、布団の中でクルリと彼に背中を向けた。 「由梨姉?」  甘えた声を出している。 「知らない」 「ごめん、俺、嬉しくって調子に乗ってたかも」 「やめてよ。触んないで」 「ごめんって言ってるだろ。お詫びに今度は俺がリードしてあげるから」 「もうしないッ」 「由梨姉……」 「ゃん、……ダメッ、……もぉっ」 「んっ……」 「ぁ……」 「由梨姉……」 「ぁ……んん」 「ぁぁ……」 「そら、くん……」  結局、この日、蒼空くんが帰ったのは、すっかり夜も更けてからのことだった。
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