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東京駅から国祭天路場駅に行くにはいくつもルートがある。青年はそのうちから乗り換えの少ないルートを選んだ。
そのルートも皆が選ぶのか、電車の中はラッシュの様相、水もないのに芋洗い状態となっていた。
「次は、国祭天路場、国祭天路場、お出口は右側です。ゆりやもめはお乗り換えです」
青年はこの車内アナウンスを聞くだけで気合が入る。ポケットに入れた銃弾を装填済のコインホルダーを握る手にも汗が滲む。回りにいる戦士たちも気持ちは同じだろう。
「まもなく、国祭天路場、国祭天路場です。ゆりやもめはお乗り換えです。お出口は右側です」
ブレーキ音が車内に響く。そして、電車が止まり、ぴんぽーんぱんぽーんと言った告知音が鳴ると同時に扉が開く。
その刹那、栓が抜かれた風船の空気のような勢いで一斉に乗客達が電車から退出する、青年はその流れの波に乗り、意図せずに車外へと押し出される。
車外に出て、少し落ち着いた辺りで、両脇にアニメ関連の広告の貼られた階段を昇る。
電子マネーのチャージが不十分だったのか足止めを食らう戦士の横をゆうゆうと通り抜け、
正面に見えるは朝日に照らされ金色とも赤とも言えぬ色で輝く金字塔を四つ逆に並べ、
その一踏みで東京の地を揺らし東京湾を波立たせん程の勇壮なる足を付けた、超級要塞にしか見えない国祭天路場の雄々しく聳える姿であった。
国祭天路場の前には黒山の大河が形成されていた。
その大河の始めの一滴はこの国祭天路場駅からぽつりと湧き出たものなのか、それとも不義な手段で下流から孑孑のように湧いて出てきたものなのかはよくわからない。
油を揚げたような蝉時雨をBGMにして青年は大河の中に入り、前へ前へと進んでいく。
その道中、黄色く白けながら激しく燃える太陽はその牙を遠慮無く剥き出しにし、黒山の大河をじわりじわりと削り行く……
ばたり、ばたり、と、人が熱中症で倒れていく、倒れた者は戦利品を得ること無く救護室へと運ばれていく……
無念としか言いようがない。ああならぬ為にも皆、水を片手に握り、定期的に口へと運ぶ。
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