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青年は東京駅に荷物を回収しに戻った後、本日の塒にしている友人宅に向かった。青年とその友人とは「俺おまえ」の関係でいわゆる親友同士である。
青年は東京に用事がある時はその友人宅を塒にしていた。
友人は青年を出迎えた。ちなみに今回は連絡も何もしていない。いわゆるゲリラ訪問である。
友人は東京で一人暮らしをしている為に青年はその辺りの遠慮をしなくてもいいと思っていた。これまでも連絡もなしに何度か訪問しているがその度に歓迎されている。
「よぉ!」
「おう、久しぶりだな」
「悪いけど泊めて」
「それは良いんだけど…… お前、東京に何しに来たんだ? 単なる夏休みの東京観光か?」
「え? 同人誌即売会……」
「は?」
友人は首を傾げて訝しげな顔をした。青年もそれを不思議そうな表情で首を傾げて眺める。
「まぁいいや、とにかく上がれよ」
青年は家に上がるなりに戦利品を床の上に置いた。
「今年も買いすぎちゃってさぁ…… 明後日纏めて送るから段ボールくれね?」
友人は同人誌を訝しげな表情をしながら眺める。そして、口を開いた。
「なぁ、今の時期ってどこで同人誌即売会やってたっけ? 幕針か? 春海か?」
「いつもの通り梨明だよ、毎年行ってるじゃねぇか」
「え? もう梨明のは終わってるじゃねぇか」
「お前が何言ってるか分かんねぇんだけど」
「今年の梨明の同人誌即売会はゴールデンウィークに終わってるじゃねぇか。俺、そん時にお前泊めたぞ? 覚えてないのか?」
「どういう事? ゴールデンウィークに終わってるって……」
「今年はオリンピックがあるからって前倒しになったってお前から聞いたぞ、国祭天路場前の体育館だかコロシアムだか知らないけど、そこで競技やるし、国祭天路場も一部を海外マスコミ向けの放送センター設置するからって、それで夏の同人誌即売会出来なくなったって、これもお前から聞いたことだぞ」
「そ、そう言われれば…… ゴールデンウィークに有給とって、ここで同人誌の整理やってた覚えが……」
「お前、今日どこに行ってたんだ?」
「だから梨明の同人誌即売会に……」
友人はスマートフォンで国祭天路場のイベント開催スケジュールを開いた。
国祭天路場は完全利用不可、スケジュールも完全なる空白となっていた。
「no way」
「それ言いたいのこっちだよ。ありえない」
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