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 当然の事ながら、反省会でみっちりお叱りを受け、落ち込んだ気持ちを抱えながら保育室に戻ると、「お疲れ!」恵令奈の明るい笑顔が迎えてくれた。 「なぁに? ぼんやりしちゃって。珍しい」  子どもの椅子に腰かけると、恵令奈は美空を見上げて笑った。 「ほんと、ごめん。ちょっと考え事してて……」 「はぁ? 運動会の練習で? あんた、すごい度胸ね」  大きな瞳をこれでもかというほど見開き、恵令奈は驚きの声を上げた。 「大丈夫。本番はちゃんとやるから」 「当たり前よ。むしろ、今日が練習で良かったわ」  あははっと笑った後、「マリッジブルー?」と恵令奈は続けた。 「えっ?」 「なんか最近、変だよ。美空」  プライベートでは、お互いのことを呼び捨てで呼び合う。今は二人きりなので、友だちモードに切り替わったらしい。 「別にそんなこと……」 「相談なら、いつでも乗るよ? これでも場数は踏んでるつもり」  マリッジブルーは未経験だけどね、と、恵令奈が悪戯っぽく笑った。 「ありがと」  できれば胸の内のもやもやを全て吐き出してしまいたいところだが、その正体が何なのか、美空にもさっぱりわからない。 「とりあえず、今は運動会に集中しなきゃ」  棚の上のビブスを手に取ると、美空はそれを一枚一枚丁寧に重ねた。 「だね。終わったら打ち上げしよ。哲太先生も誘って」 「そうだね」  美空の笑顔を見届けると、恵令奈はじゃあね、と手を振り、自室のきりん組へと帰って行った。
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