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 運動会終了後、紫雲は仲良くなった子どもたちと握手したり、写真を撮ったりと大忙しだった。  その中には、母親の姿もちらほら見られるから驚きだ。カメラを構える父親の心中は、如何なるものか。  最後の家族を送り出すと、ようやく園は静かになった。 「楽しかったです! また何かあったら声かけて下さい!」  爽やかな笑顔で挨拶する紫雲に、「ありがとう。またお願いね」園長が満面の笑みで答える。  一応、受験生なんですけど……。  美空は心の中で呟いた。親の心子知らずとは、この事か。  紫雲が帰った後、若い保育士たちに「どういうご関係なんですかぁ?」と、ハートが散りばめられた眼差しで聞かれたが、美空は「昔担任してた子だよ」と誤魔化した。  晴斗との関係は、まだ公表していない。知っているのは恵令奈と哲太だけだ。  登坂親子にもその旨は話してあったので、紫雲も口裏を合わせてくれたようだ。  今回のことは、たまたま近くを通りかかったら運動会をやっていたので、懐かしくて思わず立ち寄ったという事にしてある。  彼には今度、何かお礼をしなければなるまい。 「何がいいかな?」  紫雲の喜ぶ顔を想像し、美空は思わず笑みをこぼした。
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