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「なぁに? ニヤニヤしちゃって」
思案しながら廊下を歩く美空を、恵令奈がすかさず捕まえた。
「別に、ニヤニヤしてなんか……」
平静を装ったが、恵令奈には全てお見通しだったようだ。
「可愛い息子のことでも考えてたんじゃないの?」
さすがは百戦錬磨の恵令奈様だ。経験豊富は伊達じゃない。
「違うから!」
ムキになって否定したが、かえって逆効果だったようだ。
恵令奈の瞳がキラリと光った。
「よし! 打ち上げしよう!」
突然話の矛先が変わり、「へっ? いつ?」美空は間抜けな声を上げた。
「そりゃあ、今日に決まってんじゃん!」
「今日?」
「そ。鉄は熱いうちに打てって言うじゃん」
「あの……。言ってる意味が……」
呆然とする美空とは対照的に、恵令奈はますますヒートアップする。
「いつもの居酒屋で六時ね。哲太先生にも言っとく」
「え? ちょっと……」
「それと……」
不敵な笑みを浮かべた恵令奈が、美空に顔を近づけた。
「紫雲君も連れてくること」
「……」
暫く沈黙した後。
「ええええええええっ!?」
園内に、美空の叫びが響き渡った。
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