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「背徳感よ。背徳感」 「背徳感……?」 「そ。好きになっちゃいけないのに、好きになっちゃう。頭ではいけないとわかっているのに、心と体は流されていく……。そういうのが、燃えるんじゃない」 「はぁ……」  なんとなくわかります、という哲太を「わからなくて良し!」と一喝すると、「あらぬ妄想をするな!」美空は恵令奈の暴走を止めた。 「だいたいねぇ。私は戸籍上、母親なの。恋もへったくれもないでしょ?」 「ふぅん。つまんないの」 「それに、こんなオバサンとじゃ、紫雲君かわいそうでしょ? 只今青春真っ盛りなんだから!」  ね、と美空に同意を求められ、「ええっとぉ……」紫雲は困ったように口ごもる。それから三人の顔を順に見た後、ついには俯き黙り込んでしまった。 「あら。意外と純情」 「(ねえ)さん、それくらいにしときましょうよ。相手は高校生なんですから」  拍子抜けする恵令奈を、哲太がそっと(たしな)める。 「ごめんなさいね。つい、いつものノリで」  全く悪びれた様子もなく舌を出す恵令奈に、「いえ」紫雲が小さく首を振った。 「お待たせしましたぁ!」  タイミングよく飲み物が届いたので、美空は続けて食べ物の注文をした。  美空が心の中で「グッジョブ!」と店員を讃えたのは、言うまでもない。  間髪入れずに発せられた美空の乾杯の音頭により、波乱の宴会が幕を開けた。
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