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*** 「で? 式の日取りは?」    同僚の松岡(まつおか)恵令奈(えれな)にマジックを突き付けられ、美空は思わず仰け反った。  どうやらマジックは、マイクのつもりらしい。 「それ、俺も聞きたいです」  スズランテープを裂く手を止め、竹内(たけうち)哲太(てった)が身を乗り出した。 「哲太先生、手、止まってる!」  そのマジックで今度は哲太を指しながら、恵令奈が激を飛ばす。 「あ、はい。すいません」  大袈裟に肩をすくめると、哲太は作業を再開した。  子どもたちが帰った後、三人は美空が担当している年長児クラスのぞう組に集まり、六月に行われる運動会の準備に励んでいた。  遊戯に使うポンポンを作りながら、恵令奈は、先日行われた美空と登坂親子との会食の様子を、根掘り葉掘り聞きだしていたのだった。 「今すぐって訳にはいかないよ。紫雲君、受験生だし」  将来、小学校教諭を目指しているという紫雲は、教育学部のある大学に進学を希望している。受験生のいる家庭に、余計な波風は立てたくない。 「じゃあ、入籍は、紫雲君の受験が終わってからってこと?」 「うん。まあ、そうなるかな」  ポンポンの形を整えながら、照れ臭そうに美空は答えた。
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