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「ああ……。夏祭りの時……」  哲太は、てるてる坊主オバケの件で美空を助けた時と、お泊まり保育で美空と哲太が一晩過ごすことを知った時の紫雲の様子を話した。 「目ですよ」 「目?」 「はい。俺、めっちゃ睨まれたような気がして……」 「そう……かなぁ?」  美空は宙を見つめ、当時のことを思い浮かべた。しかし美空には、思い当たる節はない。 「あれは、嫉妬を含んだ男の目でした」 「ええ? 気にしすぎじゃない?」  あっけらかんと笑う美空に、「わかりますよ」真面目な顔で、哲太が答えた。 「あの目は、威嚇(いかく)の目です。『俺の女に手を出すな』的な……」 「まさか……」 「きっと、男にしかわからないんでしょうね」  哲太がさも理解しているかのように、何度も首肯した。 「え……。だけど紫雲君、高校生だよ? 私なんて恋愛対象のわけないじゃん。ましてや父親の再婚相手なんて……」 「甘いね」  ようやく落ち着いた恵令奈が、待ってましたとばかりに参戦した。 「言ったでしょ? 背徳感」 「背徳感……」 「そ。好きになっちゃいけない相手ほど、心は熱く燃え上がる……。ましてや美空、紫雲君の初恋の相手でしょ?」 「何でそれを?」  驚く美空に、恵令奈が得意げに答えた。 「だってあんた、プロポーズされたって喜んでたじゃん。シロツメクサの花冠、大事そうに抱えてさ」 「え? 覚えてるの?」 「当たり前じゃん。あんなイケメンにプロポーズされて、ちょっと羨ましかったもん」 「イケメンにプロポーズって……。六歳だよ? 羨ましいも何も……」 「十八だよ」 「えっ?」  急に真顔になった恵令奈が、身を乗り出すと、美空の瞳を真っ直ぐ見つめた。 「もう六歳の子どもじゃない。彼はもう、十八だよ。結婚だってできる。立派な大人なの」 「えれ……な?」
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