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「やっぱり母親にはなれないのかなぁ……?」 「ん? 何か言った?」  ご飯茶碗を見つめ盛大にため息を吐く美空の顔を、晴斗が心配そうに覗き込んだ。 「いえ。何でもありません」  食器棚の扉を閉めると、美空はにっこり微笑んだ。  いつまでもお客様用茶碗を使っている美空に、「そろそろ美空専用アイテム置こうよ」と言う晴斗の提案のもと、今日は二人でショッピングに出掛けて来たのだ。  紫雲はテニス部仲間と一緒に、朝から図書館で勉強だ。少しは受験生の自覚があるらしい。  買って来たおニューの食器を並べていると、美空の脳裏に昨日の紫雲の言葉が蘇ってきた。 ーー母親だなんて……思ってない……  紫雲は確かに、そう言ったのだ。  あれは、美空は母親の器ではないという意味なのか。それとも、この世で母親は、実の母親ただ一人だということなのか……。  一晩考えても、答えは出なかった。  二人の物とは違う女性ものの食器たちが、美空の目には、異質な存在に映る。なんだかまるで、二人の生活を邪魔しているみたいだ。 「それ片付けたら、お茶にしようか」  晴斗の優しい笑顔が、美空の不安を包み込む。 「はい」  笑顔で返すと、美空は、散らばっている包装紙を片付け始めた。
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