154人が本棚に入れています
本棚に追加
/212ページ
Ⅴ
「計画的犯行ね」
「でしょうね」
恵令奈と哲太が、刑事さながら瞳を鋭く輝かせた。
昨日、紫雲からの急な呼び出しのおかげで哲太の相談を聞きそびれた美空は、約束通り今日の放課後に時間を設け、敬老会についての話を聞いていたのだ。
祖父母に渡すプレゼント制作の打ち合わせをしていると、毎度の事ながら恵令奈がふらりと入ってきた。
プレゼントを手作りうちわに決定したところで、話題は昨日の紫雲へと移った。
「大方、頃合いを見て『やっぱりありました。ごめんなさい』ってやるつもりだったんでしょ?」
「お父さんの登場が誤算だったというわけですね」
恵令奈と哲太は二人揃って腕を組むと、うんうん、と納得したように頷いた。
「何でそんな嘘?」
「美空の部屋に行く為の口実が作りたかったんじゃない?」
「何のために?」
美空は二人の顔を交互に見た。
「それはズバリ、恋、ですね」
「こ、恋!?」
哲太の思わぬ回答に、美空は声を裏返して叫んだ。
「あははは」
「ちょっと恵令奈先生! 何が可笑しいんですか?」
突然笑い出した恵令奈に、哲太が激しく抗議する。
「だ、だって……。てっちゃんが『恋』だって……」
「そんなに可笑しいですか?」
「てっちゃんのくせに恋を語るなんて、十万年早いわ」
「それ、酷くないっすか?」
涙を流して笑う恵令奈を睨み、哲太が頬を膨らませた。
「恵令奈、笑いすぎだって」
笑いが止まらない恵令奈を横目に、「何でそう思うの?」美空は哲太に問いかけた。
最初のコメントを投稿しよう!