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私は今も思い出す、先生にナンパされた時の事を。
「 ねぇ先生… 」
「 名前で呼んで、憂己の前ではただの男だから 」
「 チャラいナンパ男はどこへ? 」
「 憂己っ あれはまぁ、先生って呼ばれる前だったしな 」
そのおかげで今があるのはわかるよ。
「 あの時の花束… 」
「 憂己、花束ならあるよ 」
え、ある?
先生は立ち上がり、花束の絵のあるキャンパスを持ってイーゼルから外す。
そこには鮮やかな、花束があった。
「 先生、これ… どうしたの?」
嘘…… あの時の絵と同じ… 薔薇の花束。
「 俺と付き合う気になった?」
「 ……ほんとにくれるなんて、先生ってバカだね 」
「 そうかもな、あの日花束の絵を見た時の笑みに惚れた… それに憂己を笑顔に出来た。だから、俺の特別な人になってよ 」
先生は先生って立場を忘れてる。
「 私が好きって言って 」
「 好きだよ、憂己… 好きだ 」
「 私も…好きです 」
公園の地面に描かれた花束は、今、私の目の前に本物の花束である。
きっと、あの日の出会いは運命だった。
私の男嫌いもいつの間にか消え、特別な人が出来た。
数日後、知り合いのいない公園へデートに行き、先生はまた私に描いてくれた。
特大の、花束を……
そこには私が気づかないでいる、花束に隠れた指輪も描かれていた。
_完_
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