親友の裏切り

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 肇は何かにつけて不遇を託つに伴い故郷(K町)での輝かしい交友が懐かしくなってK町の旧友の事を強く思慕する様になった。殊に幼馴染の中で一番気心の知れた間柄であった秀君の事を思慕していた。但、当然、小学生の時とは訳が違って中学一年の時の彼は、勉強に追われていたし、関係が無いにしても異性への関心にも追われていたし、乏しいながら目先の人間関係にも追われていたから旧友を思う暇なぞ、そんなに有る訳では無かった。けれども、冬休みになって追われるものが勉強だけになると、秀君の事を思慕する時間が多くなり、正月になって、「元気にしてますか?僕は元気です。お互いに頑張ろう!」というメッセージ付きの秀君の年賀状を見た日には愈々以て秀君への思いが募るのだった。だから会いたいと強く願ったが、自分に自信を持てない彼は、現状の自分を見られたくないという思いも強く、結局、踏ん切りがつかず、回避してしまい、冬休み中に会いに行く事は出来なかった。けれども同じアパートの子だったので秀君が引っ越してしまう恐れがある。だから引っ越してしまわない内に会っておかないと後悔すると思って中学一年を修了して春休みになった或る日、一念発起して会いに行く事にした。
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