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曖昧な街
ピーポーピーポーと、人もいなくなった工場跡地に救急車と何台もの警察車両が停まる。
「自殺……ですね。」
若いスーツを着た刑事は、横たわる死体を見下ろして言う。
「見た感じは…そうだな。……何も死ななくても…。」
年齢が上のもう一人の方は、屈んで手を合わせた。
「赤城……お前、何でこんな事したんだ?」
自分の拳銃を頭に当てての自殺。
警察は彼を重要参考人として追っていた。
警察が押収した薬を、横流ししていたのだ。
「バレたからって、死ぬ事ない………。」
呟いて撃ち抜かれた頭を見た。
銃創に火傷の跡が見当たらない。
自分で頭を撃ち抜けば、至近距離の為、火傷の跡が少なからず付くはずだ。
(まぁ、ここで俺が言わずとも、鑑識が気付く。)
考えて立つと、赤城の娘が大きな声で叫びながら近づき、止められていた。
現場検証はまだ終わっていなかった。
父と娘、二人暮しだったはずだ。
娘の泣き顔は、一生忘れないだろうと、刑事は思った。
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